本文
ここまで 福永研究室、山下研究室、稲垣研究室、阿部研究室、齋藤研究室と庄原キャンパス 生命科学コースの卒業生の声をお届けしてきましたが、今回は研究室ごとではなく、同じ年に入学した3人を紹介したいと思います。
今回ご紹介するのは、福永研究室から広島大学の大学院に進み農研機構のポスドクを経て、国立研究開発法人?量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所で主任研究員をされておられる山谷浩史さん、田井章博教授(現在?徳島大学)のもとで博士課程まで進まれて、岡山県立大学の助教をされている岩岡裕二さん、達家雅明教授(この3月にご退職?現在名誉教授)のもとで修士まで進まれて、現在、ヒューマン?メタボローム?テクノロジーズ株式会社で人事の仕事をされている藤井幹子さんです。
山谷浩史さん(兵庫県立東播磨高等学校卒 2011年3月生命環境学部生命科学科卒業)
Q 今はどういうお仕事をされてますか?
私は現在、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)の高崎量子応用研究所に所属しています。主な研究は量子ビーム(ガンマ線, イオンビームなど)照射により植物の突然変異を誘発させ、得られた突然変異体集団の中から、目的とする有用な突然変異体(例えば収量が多い、食味が良い、病気に強い)を単離し、その原因遺伝子を特定しています。将来的には得られた突然変異遺伝子のDNAマーカーを作成し、品種改良へ利用できれば良いと考えています。これまでの経歴ですが、私は県立広島大を卒業してから、広島大学大学院の博士課程前期に進学しました。2年間民間の種苗会社で勤務した後、再び広島大学大学院に入学し、博士号を取得しました。その後、国立研究開発法人 農業?食品産業技術総合研究機構(農研機構)で博士研究員をした後、今年度から現職に着任しました。
Q 庄原キャンパスでの学生時代はどういうふうに過ごされましたか?
県立広島大学ではテニス部に所属していました。ラケットよりも酒瓶を握っていた記憶です。研究室配属後には共同研究先で、葉の老化誘導時にも緑色を保つ突然変異体の原因遺伝子の単離とどのようにしてその現象が起きているかを明らかにしました。毎日遅くまで実験をし、数えきれないほど失敗しました。イネの遺伝子組換え体の作成は半年近くかかり、ポジティブな結果を得られたことは今でも印象的です。
Q 庄原キャンパスで学んだことは今のお仕事などにどのようにいかせてますか?
私は学部の時には特に遺伝子に興味を持ち分子生物学?分子遺伝学を中心に勉強しました。その延長線上で遺伝子解析を主に行っていた福永研究室に所属しました。県立広島大学で得た知識は、民間の種苗会社や国立研究所において研究を行うための大切な基盤になっています。
Q 他の都道府県から庄原キャンパスに来られていかがですか?離れても広島への思いは?
大学受験に合格した後、家を探しにはじめて庄原市を訪れたときは、すごい田舎と驚きました。電車は数時間に1本しかなく、市内はファミレスがありませんでした。そのため、これから4年間暮らしていけるのかすごく不安でした。遊ぶ場所が少ないということは、どこかへ行くよりも友人の家で集まることが私の日常になったため、距離の近い人間関係を築くことができました。広島県から離れてしばらく経ちますが、時々友人に会いに行きます。
Q 最後に何かひとこと
庄原キャンパスでの4年間は、自由に使える時間が多いと思います。その使い方は人それぞれで遊びに使うも、勉強に励むのも良いと思います。その時に得た経験は必ず将来役に立つと思いますので、色々と新しいことにチャレンジしてください。私はQSTに所属していますが、将来的に量子ビームを利用した突然変異体を用いて県立広島大学、広島大学及び農研機構とも共同研究を行いたいと考えています。
QSTの量子ビーム(イオンビーム)照射装置です。上方から量子ビームをサンプル(植物種子など)にあてて、突然変異を誘発させます。
岩岡裕二さん(広島県立広島井口高等学校卒, 生命環境学部生命科学科2011年卒業, 総合学術研究科 生命システム科学専攻 博士課程後期2018年修了 田井研究室(現 徳島大学))
Q 今はどういうお仕事をされてますか?
2018年に庄原キャンパスの田井教授(現 徳島大学)の研究室で博士号を取り、現在は岡山県立大学 保健福祉学部 栄養学科 食品化学研究室で助教として機能性ポリフェノール成分の研究を行う傍ら、学生実験で学生を指導しています。ポリフェノールは抗酸化作用など多くの作用を示し、種々の疾病を予防する機能性成分として近年注目されています。タンニンやフラボノイドなどの名前を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これらはすべてポリフェノールの一種になります。私は現在、がんや動脈硬化などの疾病の一因とされる糖化反応を阻害する作用(抗糖化作用)を示すポリフェノール成分を天然物から探索する研究を主に行っています。最近、食品企業との共同研究で食品素材であるトウビシ果皮エキスから抗糖化作用を持つ成分を単離?同定し、その成果を論文発表することができました。また、この論文発表によりトウビシ果皮エキスの機能性表示食品としての開発に貢献することができました。研究成果が人々の健康寿命の延伸に少しでも貢献できればと思い、日々研究しています。
Q 庄原キャンパスでの学生時代はどういうふうに過ごされましたか?
学部3年次まではとにかく生活の中心が部活動(水泳部)でした。練習に遊びにメリハリがしっかりとした部活で楽しかったことを覚えています。他大学や他キャンパスの水泳部との交流も多くあり、部活動を通じて人と関わる機会が多かったので、コミュニケーション力も自然と養われたと思います。アルバイト(飲食系)でも大学の先輩や後輩との交流があり、庄原キャンパスのフットサル大会にアルバイト仲間で出場したこともあります。研究室に配属されてからは研究が生活の中心になりましたが、研究以外にも研究室の先輩や後輩と鍋パーティーなどをしたり、たくさん交流する機会がありました。また、教育に興味があったため、教職課程を履修し、教員免許も取得しました。教育実習では指導教員の授業を見学させて頂いたり、自身で授業を行うなど、実際の教育現場の雰囲気を肌で感じることができ、とても貴重な経験をさせて頂きました。
Q 庄原キャンパスで学んだことは今のお仕事などにどのようにいかせてますか?
私は卒業論文から博士論文の研究まで一貫してビタミンCの研究を行い、研究に対する考え方や実験手法のエッセンスは田井教授から教わりました。修士論文までの研究では主に化学反応を主体とした実験をしていましたが、博士論文の研究ではこれに加えて、タンパク質に着目した実験にチャレンジしました。タンパク質の取り扱いや文献の調査などほとんどが一からで苦労しましたが、その分、博士論文の研究成果を論文発表した時の達成感は修士論文までの研究と比べ物にならない程大きかった事を覚えています。この時の苦労や悩んだ経験は現在行っているポリフェノールの研究でも活かされていると思います。また、現在の職場では分析化学、生化学、微生物学など複数の分野の学生実験の担当していますが、実習で使用するほとんどの実験機器が庄原キャンパスで見た事、触れた事があるものばかりで、その経験が実習でかなり役に立っています。
Q 庄原キャンパスで学んで他の県で就職してますが広島への思いは?
今の職場は岡山県の総社市に位置しており、観光地で有名な美観地区のある倉敷市に近いです。そのため、倉敷に行けばお店も多く、正直便利なことも多いです。しかし、住めば都で学生時代の色々な思い出とともに庄原を懐かしく思うことが今もあります(博士課程修了まで実に10年間住んでいました、人生の約1/3は庄原です)し、今でも大学時代の友人と、オンライン飲み会をしては思い出にふけっています。私自身は広島県出身で生粋のカープファンですが、岡山ではほとんどテレビ中継をしていないので広島で毎日のようにテレビ中継していたのを懐かしく思いながら、スマホで毎試合結果をチェックしてます。また、広島に帰ったらかなりの